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ファイブ・アイズ
五カ国諜報同盟50年史

【内容】
“エシュロン”の名で取り沙汰され、スノーデンの暴露で一端が明らかに。
長らく謎に包まれた「秘密同盟」、内部関係者による初の証言。

■解説:小谷賢(日本大学危機管理学部教授)

●「ファイブ・アイズ」とは、米・英・加・豪・ニュージーランドの五カ国によるインテリジェンス共有体制の通称。
●軍事や政治、テロや武器取引、さらに気候変動に関する情報まで、扱う範囲は安全保障に関わる全てにわたる。
●本書は、英米双方の情報機関で五〇年にわたって活躍し、秘密工作の現場に携わってきた人物による、内側からの重要な証言。

著者は、英米双方のインテリジェンス機関に仕えながら、現場の秘密工作やカウンターインテリジェンスに携わった異色の経歴を持つ人物。五〇年にわたってファイブ・アイズに関与してきた彼が、自らの経験とともに、この同盟の起源と発展、そして次々と新たな脅威が台頭するなかでの未来までをも明らかにする、内側からの重要な証言。

■本書へのレビュー
諜報機関に馴染みの薄い人であっても本書の議論を楽しめるに違いない。グローバルなインテリジェンス活動と戦略の歴史について学び始めた人にオススメしたい。――「ジャーナル・オブ・ストラテジック・セキュリティー」

現役・予備役・退役を問わず、米国海軍の情報将校と上級情報専門家たち全員に、本書を読むことを強く推奨する。――「NIP(海軍情報専門家)リードブック」


【内容目次】
献辞

ウェスト卿による序文

はじめに

第1章 英米の特別な関係の成立――一九六八〜七四年
時代の一刻――ウィンストン・チャーチルとフランクリン・ローズヴェルト
特別な関係の起源
エニグマとウルトラのデータ
一九六○年代における英国民とインテリジェンス
冷戦期の英米のインテリジェンスを決定付けた歴史的前例
米国による「頭上」インテリジェンスと国家偵察局(NRO)

第2章 ソ連からの挑戦――一九七四〜七八年
ジョニー・フロスト並びにバイティング作戦およびマーケット・ガーデン作戦の遺産
新たな「特別な関係」の始まり
ファイブ・アイズ海軍の基盤制度
潜水艦を主体とするソ連海軍の脅威
「一九八五年の海戦」―― 対ソ戦の遂行・勝利計画
ファイブ・アイズの優位性
ソ連のインテリジェンスへの侵透
英米の傍受局とそのインテリジェンス成果物

第3章 政治的・構造的変化――一九七八〜八三年
ファイブ・アイズの文化的基盤
改革とマウントバッテン要素
デニス・ヒーリーと改革
改革の悪影響の歯止めとなった米国の政治制度
改革の戦略的影響
海外基地の重要性
英米の原潜協定
ソ連とその同盟国、代理勢力に対する行動 
マーガレット・サッチャーによる最大規模の投資とインテリジェンス投入
米国のウォーカー・スパイ網の影響

第4章 特別な関係の最盛期――一九八三〜二〇〇一年
ファイブ・アイズにおける英米海軍情報部の重要性
ファイブ・アイズの強み――カナダ、オーストラリア、ニュージーランド
ソ連邦崩壊の影響
実用的な情報を駆使して大惨事を防ぐのは誰か
湾岸戦争後の変化と技術革新
非対称戦争を推進する米海軍
「サンディエゴの有志連合」――米太平洋艦隊第3艦隊
軍務遂行の新手法と「ジャスト・イン・タイム」

第5章 二〇〇一年九月一一日とその余波
九・一一の結末は変革を促進するも偏在的
誰が誰をスパイできるのか
メタデータの活用
新デジタル時代とそれが二〇二〇年までの安全保障に及ぼす影響
「クラウド」――活用かプライバシー保護か
二〇二〇年以降のかつてない規模のデジタル革新
複数の領域にわたるサイバー脅威の重大性

第6章 インテリジェンスの役割、使命、活動――一九九〇〜二〇一八年
ポスト・ソ連時代におけるインテリジェンスへの投資
インテリジェンスと核兵器合意
マイクロ波・デジタル革命とインテリジェンスへの影響
シギントの重要性
「関係悪化症候群」はあったのか
欺瞞と新たな革新的インテリジェンスの機会
集団的記憶喪失

第7章 現在の脅威と新たな脅威
内部関係者の脅威
コンピューターの技術革新とインテリジェンスへの影響
インテリジェンスと薬物
国際テロリズム、人身売買、海賊行為、違法武器移転およびマネー・ロンダリング
インテリジェンスと中東――過去が序幕になるのだろうか
一九九〇年八月の第一次湾岸戦争とイラク
イスラエル・パレスチナ問題
国連決議二四二
インテリジェンスと政治――分離の確たる必要性
世界に挑む中国
インド太平洋地域の平和とインドとの関係
ウラジーミル・プーチンのロシア
新たに出現した脅威、課題、情報収集と分析への影響
最新のヒューミント
エージェントの運営
気候変動

第8章 二一世紀におけるファイブ・アイズ・コミュニティー
次世代テクノロジーの未来世界 
ファイブ・アイズの不朽の組織文化

付録 著者が影響を受けた人物と恩師

略語一覧/原注/参考文献
訳者あとがき
解説 元関係者が明らかにする“秘密同盟”の堅固な実態/小谷 賢


【著者・訳者・解説者略歴】
アンソニー・R・ウェルズ(Anthony R. Wells)
英米両国の市民としてそれぞれの諜報機関に勤務した経験を持つ、存命中唯一の人物として知られる。ロンドン大学で博士号を取得後、イギリス海軍兵学校で訓練を受け海軍に入隊。情報操作などの秘密作戦に従事し、最年少で教官も務めた。米国市民となったあとは米海軍にて揚陸艦『コロナド』、潜水艦『フロリダ』等で勤務する。その後アメリカ国家諜報機関において人員、インフラ、政治システム等へのテロ攻撃のダメージ最小化等の任務を務め、現在は現代情報戦の専門家として知られている。

並木均(なみき・ひとし)
1963年、新潟県上越市生まれ。中央大学法学部卒。公安調査庁、内閣情報調査室に30年間奉職したのち、2017年に退職、独立。訳書にケント『戦略インテリジェンス論』(共訳、原書房、2015)、キーガン『情報と戦争――古代からナポレオン戦争、南北戦争、二度の世界大戦、現代まで』(中央公論新社、2018)、パーネル『ナチスが恐れた義足の女スパイ――伝説の諜報部員ヴァージニア・ホール』(中央公論新社、2020)など多数。

小谷賢(こたに・けん)
日本大学危機管理学部教授。1973年京都生まれ。立命館大学卒業、ロンドン大学キングス・カレッジ大学院修了、京都大学大学院博士課程修了。防衛省防衛研究所主任研究官、防衛大学校講師、英国王立防衛安保問題研究所(RUSI)客員研究員等を経て現職。専門は国際政治学、インテリジェンス研究。