たった一つの父の宝物

アンドレイ・マキーヌ著
白井成雄訳
本体 1,800円
46判上製
ISBN 4-87893-500-6
発行 2002.08
【内容】
現在、世界30ヶ国に翻訳され絶賛を浴びている、現代フランスのロシア系作家マキーヌ。
祖国を捨て、パリに渡ってまで書き残したかった、その想いのすべてを込めて執筆された処女作。
「英雄勲章」が唯一の宝物のアル中の父。経済繁栄に憧れ、西側経済人に次々と身を委ねる娘。絶対に理解しあうことのできぬまま、それでもお互いの人生を想いあう父と娘。ある平凡な父と娘の人生を通して、ソヴィエト社会を生きざるを得なかったロシア人の、けっして語られることなく記憶の中だけにしまい込んできた、幾万のエピソードや想いが凝縮される。
[ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール誌]評
彼の物語の背後には、あらゆる時代を通じて最大の悲劇の一つに直面した、幾千万もの男女の運命が横たわっている。慎み深く、控えめで、厳粛でさえある彼の作品の美しさは、現在、西欧を堕落させつつある破廉恥な告白もの、安手の消費文学と対極的なものである。
【著者紹介】
アンドレイ・マキーヌ(Andrei Makine) 現代フランスのロシア系作家。1957年、シベリア生まれ。悲惨な人生を送らざるを得なかった両親をもち、収容所の影に脅えながら育つ。モスクワ大学で文学博士号を取得し、大学で文献学を講じていたが、1987年、すべてを捨ててフランスへ渡る。当初は、パリの墓地で雨露をしのぐ生活もしながら、処女作である本書を執筆しフランス文壇デビュー。20世紀の悲劇を生きざるを得なかった数千万のロシア人の人生の哀しみを、初めて描ききった作家として絶賛されている。1995年「ゴンクール賞」受賞。