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戦争に行った父から、愛する息子たちへ

【内容】
「遠い戦地で兵士だった時代について、腹を割って、君に話してみたい」
戦争の真実を伝え続けて著名なベトナム帰還兵の作家による、五十歳を過ぎて生まれた二人の息子と、いつか去り行くこの世界への、慈愛に満ちたメッセージ。

 何かを得ることへの欲求で溢れているこの世界で、君たちには人生の一部をまさに反対のことに捧げてほしいと願っている。つまり、人から何かを得ずして何かを与えること。ティミー、君は幼い頃、十五丁目通りに住むホームレスの男のために、買物袋に贈り物を詰め込んだことがあったね。そして、タッド。自分にとって完璧な日はどんな日かと訊ねられたとき、君はかつてこう答えたね。
「みんなをハッピーにできた日、特にウサギたちを」
 たとえば、二〇三八年、時間を作って思い出してみてほしい。君たちが誰かに何かを与えることのできた瞬間が、お父さんの人生で最も幸せで、最も記憶に残る瞬間だったということを。そして同じことをずっと継続してほしい。得ずして与えること。お父さんを輝かせてほしい。(本書「お父さんが去ったら」より)


【内容目次】
息子への手紙
メイビー・ブック
こげ、こげ
物語を信じること
父の幻影
ホームスクール1――二つの頭
マジックショー1
寿司
父親のプライド1――十五丁目通りの男
子どもの幸せ
父親のプライド2――母の死とティミーの言葉
もしも
父のヘミングウェイ1
ホームスクール2――手紙
七面鳥世界一の町
父親のプライド3――理性の放棄
父親の平和主義
父のヘミングウェイ2――フィクションとノンフィクション
ホームスクール3――戦争を支持するのなら
ティミーの寝室のドア
父親のプライド4――十五丁目通りの僕の友だち
戦友たち
マジックショー2
不謹慎だが真面目な提案
戦争からの帰還
落選
寿司、寿司、寿司
父のヘミングウェイ3
お父さんが去ったら
最後のレッスンプラン
訳者あとがき


【著訳者略歴】
ティム・オブライエン(Tim O'Brien)
1946年ミネソタ州生まれ。マカレスター大学政治学部卒業後、1969年から1年間ベトナムで従軍。除隊後ハーヴァード大学大学院博士課程で政治学を学び、1973年に自らの体験をもとにしたノンフィクション『僕が戦場で死んだら』(中野圭二訳、白水社)を出版。『カチアートを追跡して』(生井英考訳、国書刊行会)で1979年に全米図書賞を受賞した。他の著書に、『ニュークリア・エイジ』(1985年)、『本当の戦争の話をしよう』(1990年)、『世界のすべての七月』(2002年、以上村上春樹訳、文春文庫)、『失踪』(1994年、坂口緑訳、学習研究社)などがある。

上岡伸雄(かみおか・のぶお)
1958年生まれ。アメリカ文学者、学習院大学教授。訳書に、リチャード・ライト『ネイティヴ・サン アメリカの息子』、シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』(以上新潮文庫)、ヴィエト・タン・ウェン『シンパサイザー』、『革命と献身 シンパサイザーU』(以上早川書房)他多数。著書、編書も多数。

野村幸輝(のむら・こうき)
1965年生まれ。アメリカ文学者、旭川市立大学准教授。著書に、『ティム・オブライエン ベトナム戦争・トラウマ・平和文学』(英宝社)のほか、オブライエンの作品論“Symbolic Aesthetics in Tim O'Brien's‘The Man I killed’”や彼へのインタビュー“Tim O'Brien: An Interview”がある。