キルケ

マデリン・ミラー
野沢佳織訳
本体3,600円
46判並製
ISBN978-4-86182-849-2
発行 2021.4
【内容】
「あの、人間って、どんなものですか?」
ギリシア神話に登場する女神で魔女のキルケ。愛する者を守り、自分らしく生きようとする、遠くて近い一人の女性として、今、語り直される――。世界的な注目を集める作家による魔法のような物語。
女性小説賞 最終候補作
太陽神ヘリオスと女神ペルセの間に生まれたキルケ。父のように力があるわけではなく、母のように美しくもなく、人間のような声を持つ。きょうだいにいじめられ、周りからは除け者にされるキルケは、しだいに神の世界よりも人間の世界に惹かれていく。ただ、彼女は〈魔法〉を使うことができる。その力を警戒する神々によってアイアイア島に追放されるのだが、そこで人間のオデュッセウスと恋に落ちる──。
ホメロスの『オデュッセイア』を反転し、女神であり、魔女であり、そして一人の女性であるキルケの視点からギリシア神話の世界を再話する、魔法のような物語。女性小説賞最終候補作、「ガーディアン」ほか各紙でブック・オブ・ザ・イヤーに選出。
キルケ(Circe)とは
アイアイア島にすむ魔女。太陽神ヘリオスとニュンペのペルセの間に生まれた。名前の由来は、「タカ」または「ハヤブサ」と思われる。『オデュッセイア』では、オデュッセウスの部下たちを豚に変えるが、オデュッセウスに挑まれると、彼を恋人にし、部下ともども島に滞在することを許し、彼らが再び出発するときには援助をする。キルケは長きにわたって文学の題材とされ、オウィディウス、ジェイムズ・ジョイス、ユードラ・ウェルティ、マーガレット・アトウッドといった作家にインスピレーションを与えた。
――本書「登場人物解説」より
【著者・訳者略歴】
マデリン・ミラー(Madeline Miller)
ボストンで生まれ、ニューヨークとフィラデルフィアで育つ。ブラウン大学で古典文学を学び、学士号および修士号を取得。ラテン語、ギリシア語、シェイクスピア文学を、学校で、また個人指導で教えている。2011年のデビュー作『アキレウスの歌(The Song of Achilles)』(早川書房)は、2012年のオレンジ賞を受賞し、「ニューヨーク・タイムズ」紙が発表するベストセラー作品のひとつとなり25の言語に翻訳されている。現在、ペンシルヴェニア州、フィラデルフィアの近郊に在住。
野沢佳織(のざわ・かおり)
東京生まれ。上智大学英文学科卒業。翻訳家。主な訳書に、トレイシー・シュヴァリエ『ブレイクの隣人』『林檎の木から、遠くはなれて』(以上柏書房)、ルータ・セペティス『灰色の地平線のかなたに』『凍てつく海のむこうに』(以上岩波書店)、ロバート・ウェストール『禁じられた約束』『ウェストール短編集 遠い日の呼び声』(以上徳間書店)など。共訳に、ニール・ゲイマン『アメリカン・ゴッズ』(角川文庫)『物語北欧神話』(原書房)、ヒシャーム・マタール『帰還』(人文書院)など。