哲学/思想/宗教

世界
日本
異端と逸脱の文化史

世界
日本

世界
日本

小説
時代/歴史小説
評論/エッセイ
詩歌

小説
金原瑞人選オールタイム・ベストYA
評論/エッセイ
詩歌

映画/演劇
音楽
美術
画集/作品集

スポーツ
ワイン/酒
趣味/実用その他

新約聖書 訳と註

本巻
別巻

加賀乙彦長篇小説全集
辻章著作集
川村湊自撰集
ジェンダー研究のフロンティア
知の攻略 思想読本



新海誠論

【内容】
映像作品、関連書籍、本人インタビューなど網羅、『すずめの戸締まり』への軌跡を完全解明!
「危機の時代を健やかに生きる」覚悟とは?

気候変動/SDGs、伝統/未来、信仰/科学、地方/都市……
“新海誠”を読解することは、現代日本を問うことであり、我々の未来を救う鍵がある。
分断「/」のネット時代に現れたゲーム的な作家は、如何に成熟し、世界との関係をつなぎ直すのか?
新海誠を超えた、思想としての「新海誠」。


『新海誠論』、ぼくは1983年生まれですが、近い世代、ロスジェネ世代の「ありえた未来」へのレクイエムであり、「昔はよかった」「戻りたい」と嘆かず現状の現実を肯定し、次世代とともに「危機の時代を健やかに生きる」覚悟を決めるための本だと思います。
本書は既存の新海誠論と比較して「強い」と思います。その意味は、1:『ほしのこえ』から『すずめの戸締まり』まで、一貫した論になっている。2:新海発言を総ざらいしエビデンスを固めてある。3:既存の新海誠論・新海誠観を覆すような解釈がある。という辺りです。全体は200頁そこらの、割とコンパクトで読みやすい本になっているかと思います。ぜひとも若い世代の方に読んでほしいですね。(著者Twitterより)


【内容目次】
はじめに――失われた「つながり」を求めて

序――ニューメディア時代の文化英雄
新海誠の経歴――ニューメディア出身の映像作家/戦後日本アニメーション史における位置づけ/失われた「つながり」を求めて/ニューメディアと伝統文化の「習合」/新海誠の日本論/セカイ、古典、そして世界へ――フィルモグラフィ

第一部 セカイ期
1 『ほしのこえ』――セカイのはじまり
コンピュータとインターネット時代の旗手として/メールの送受信を「ドラマ」の中心に据える画期性/コンピュータによる世界の拡大と、その孤独/ロボット=「科学技術による力の増大」のメタファーとして/身体や顔のない「つながり」がもたらす飢餓感/「萌え」――実体に到達できないことによる焦燥感/メディアと孤独――村上春樹の影響/オタクの葛藤の象徴としての「世界」――『エヴァンゲリオン』の影響/行動するか、引きこもるか/閉じられた「世界」同士がつながる可能性へ/「美少女ゲーム」のスタンドアローン性を超えるために
2 『雲のむこう、約束の場所』――「セカイ」の外へ
コミュニケーションの寓意としての雲と飛翔体/「セカイ」の外に出るためのメッセージ/「雲のむこう」と「約束の場所」とは何か/アニミズムと「カミ」の感覚/永遠と流動/「均質な脱場所」と「地域の固有性」/新海誠は「ポスト宮崎駿」か
3 『秒速5センチメートル』――失われた「未来」との別れ
失われた「未来」への喪の作業/人工的な光の美しさへ/憧れの対象、ありえた未来の断念/風景の美化――柄谷行人『日本近代文学の起源』の影響/「新しい風景」と対応する「新しい内面」/宮崎駿との対決――「新しい共同体」の擁護

第二部 古典(コテン)期
4 『星を追う子ども』――喪失から成熟へ
高みを目指すのではなく、足元を描く/手描きのアニメーションによる身体性の導入/「死の秘密」を探究する物語/かつてあったと夢想される、理想的な過去の断念
5 『言の葉の庭』――「足場のない」不安定な時代の肯定
「ハイブリッド」としての日本文化を肯定する/風景とナショナル・アイデンティティ/言葉と、言葉にならなかったものと/性と身体の肯定――孝雄と雪野の間に何が起こったか/言葉なしに通じ合えた状態への回帰願望
6 『君の名は。』――「美」というパルマコン
瀧と三葉はいつ恋に落ちたのか――身体によるコミュニケーションの先行/産(ムスヒ)霊の、インターネットとネットワークの時代における再解釈/カタストロフそのものの「美」/他者の増加――多数のスタッフの参加と、新宿を舞台にすること/ズレとつながりの感覚を操作する「編集」/スマホ世代の「つながり」の感覚を、世界や社会とつなぐ/キャラクターへの愛着を、現実の震災へとつなぐ/孤立した人々をつないでいくために/黄昏時――二つの異なる世界が、重なる/ニューメディアと伝統文化の「習合」/「カミ」のオタク文化への習合――破壊性と多産性/ニュータイプの日本浪漫派/「美化」という問題――第二次世界大戦を参照して/「美」というパルマコン/死と身体と性――戦後日本サブカルチャーの主題として

第三部 世界期
7 『天気の子』――危機の時代を健やかに生きるために
「災害をなかったことにする映画だ」という批判に対して/気候変動の物語であることは、なぜ日本では意識されにくいのか/「第三の敗戦」を防ぐために――アニミズムと神道の欠点の克服/貧困層の物語であることは、なぜ意識されないのか/「心理的フィルタリング」に抗して/叛逆者たちの物語――「子ども」にこそ希望がある?/SNS時代における政治的アクションの寓話/セカイ系的な存在が、世界を救う――『天気の子』とSDGs/Weathering With You――みんなで力を合わせることで、危機を乗り越える/「セカイ」と「世界」とが、メビウスの輪のようにつながる/「大丈夫」は、どうして大丈夫なのか/縄文映画としての『天気の子』/「ニュータイプの日本浪漫派」を、社会改良の方向に捻じ曲げる/危機の時代を健やかに生きるために――過去と未来のハイブリッドという希望
終章 『すずめの戸締まり』――世界をつなぐ糸たらんことを
安倍晋三元首相暗殺事件を受けて/新海作品のクリティカル・ポイントを振り返る/衰退していく地方への喪の儀式――『すずめの戸締まり』/犠牲にされる者たち――天皇と福島/神への叛逆――東日本大震災への諦念を超えて/「灰色」で「薄く穏やか」だが、生命が存在する世界へ/「世界」との関係をつなぎなおすために/つなぎなおし、新しくつなぐこと
おわりに

主要参考文献・引用文献/註