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赤い兵馬俑

【内容】
京都東山の豪華マンションで、高級サロンの女主人である美貌の画商が殺される。実行者は中国より派遣された刺客=李小豪。現場からは始皇帝時代より古いとされる奔馬の兵馬俑一体が持ち去られていた。京都府警の捜査によれば、被害者の女流画商は、最近台湾から仕入れた兵馬俑の取引をめぐりトラブルに巻き込まれていたという。事件の影に見え隠れする中国通の保守系大物政治家。共産圏絵画の大量輸入によって女流画商を育て上げたロシア人画商。中国奥地を市場とするアメリカ人の買い付け屋。一介の女性画商がなぜ中国政府筋に派遣された刺客に殺されねばならなかったか。この謎を追求するうち、統一中国を維持しようとする勢力と、各地の独立運動の援助により中国分裂を策す勢力との、国際的・潜在的な確執に逢着する。

【著者紹介】
吉野光1938年、長野県生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業。東京国立博物館勤務などを経て、現在、群馬県立女子大学教授。『撃壌歌』(河出書房新社)により第二十八回文藝賞受賞。他に『雪舟漂泊』(河出書房新社)