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夏のレクィエム

【内容】
妻は末期がん、最後の日々に
ふたたび咲くロマン!

一滴の水も呑み込めなくなって
その日々を妻が日記に綴り
家で看取った夫がそれを小説に
クリスチャンで酒飲みの妻
不倫がバレて家を出された夫
元文学ボーイと文学ガール
色んなことがありました。
南国の眩い光 悲しすぎる影
死を前にして妻は忙しい
ジョークを言い 神に祈り
西瓜を口に含み 器に戻す
この命がいとおしい
たまらなくいとおしい

この命が
いとおしい

 妻は自宅で息を引き取ったのだが、最後の四十二日間、邪悪な癌が喉をふさぎ、一滴の水も飲めなかった。(…)ただ、死を前にしていると思えぬほど二人はジョークを言い合い、一度もいさかいをしなかった。こんなこと、ここ数年あったろうか。
 納骨からしばらくした或る日、夫は脳をいたく刺激される一品にでくわした。妻の寝台のヘッドボードに小さなノートを見つけたのだ。(…)
 何度も読み返すうち、これを篋底に置いておくのが惜しくなった。この中には自分に不都合なこと、思い出したくないことも含まれているが、この日記を土台にして小説が書けないものか。(…)そうだ小説を書こう。(「序章」より)