戦史の余白
三十年戦争から第二次大戦まで
大木毅
本体 2,000円
ISBN 978-4-86793-010-6
発行 2023.12
【内容】
世界を一変させた歴史に残る戦い。
だがそこには、語られない余白が必ずある――
軍事史の第一人者による、最新の戦史
三十年戦争、アメリカ独立戦争、ナポレオンのロシア遠征、第二次大戦でのウクライナを舞台にした戦いから、マンシュタイン、山本五十六などの知られざる秘話まで――従来の正面からの評論とは趣が異なるが、戦史・軍事史のさまざまな側面を、いわばからめ手から描きだしたユニークな一書。軍事史の第一人者による、最新の戦史。
【内容目次】
はじめに
第1章 「近代化」する戦争
1-1 「北方の獅子」の快勝――グスタヴ・アドルフとブライテン
フェルト会戦
スウェーデン軍の進歩
ブライテンフェルトへ
ザクセン軍潰走
驚くべき規律
1-2 近代散兵の登場――アメリカ独立戦争の戦術的一側面
横隊戦術から散兵へ
赤衣兵(レッドコーツ)――横隊戦術の精華
奔放なる兵士――大陸軍
猛威を振るうライフル
1-3 マレンゴ余話二題
葦毛の「マレンゴ」
鶏のマレンゴ風
1-4 雪中に消えた大陸軍(ラ・グランダルメー)――ナポレオンのロシア
遠征
破滅に至る決断
両軍の態勢
失敗した短期戦
スモレンスクの過誤
ボロディノ会戦
敗走
1-5 アルビオン作戦――ドイツ軍最初の陸海空協同作戦
バルト海の三島
対立する陸海軍
独露両軍の態勢
急きたてられた作戦発動
先手を取られたロシア軍
島嶼の包囲戦
とどめとなった海戦
成功した陸海空協同作戦
1-6 第一次世界大戦の「釣り野伏せ」
第2章 雪原/砂漠/廣野――第二次世界大戦、無限の戦場
2-1 鷲と鷹――英本土航空戦
戦いを決意したヒトラー
戦略爆撃の用意がなかったドイツ空軍
鷹の成算
「海峡の戦闘」
鷲攻撃
「かくも少数の人々」だったか?
アンチ・クライマックス
2-2 上海に罠を仕掛けた男――フォン・ファルケンハウゼン小伝
中国はより重要だった
知日派ファルケンハウゼン
指揮を執るファルケンハウゼン
2-3 熊を仕留めた狩人 「冬戦争」トルヴァヤルヴィの戦い
ソ連の「勢力圏」
交渉決裂
生え揃っていなかった熊の爪
狩人の軍隊
ラドガ・カレリアに迫る危機
タルヴェラ来たる
打撃また打撃
2-4 作戦次元の誘惑――北アフリカ戦線1941 ー1942
独断専行が招いた一大戦役
第一次トブルク攻撃
乱れた間奏――「簡潔(ブレヴィティ)」と「戦斧(バトルアクス)」
「十字軍戦士」
一大退却戦
冷厳な戦理
ガザラの戦い
トブルク陥落とエジプト侵攻
三度のエル・アラメイン会戦
2-5 狐をしりぞけたジョンブル――オーキンレック将軍の奮戦
強敵来たる
チャーチル首相との衝突
先に撃つのはどちらか
奇襲に成功した第8軍
「死者慰霊日の戦車戦」と「金網柵への突進」
クルセーダー作戦を継続すべし
追われる狐
2-6 石油からみた「青号」作戦
石油に渇くドイツ
「1942年初頭のソ連国防経済」
技術者たちの戦争
コーカサスを去る石油技術旅団
2-7 回復した巨人 キエフ解放1943年
危うい均衡
「欺騙」の傑作
ドイツ軍は予想していたのか?
キエフ解放
犠牲となった第25装甲師団
決定打は得られず
第3章 軍事史万華鏡
3-1 ビアスの戦争
3-2 「ハイル・ヒトラー」を叫ばなかった将軍
3-3 マンシュタインの血統をめぐる謎
名家の子
サラブレッド
悪いうわさ
元帥自身が認めていた?
3-4 インドシナで戦ったフランス外人部隊のドイツ兵
3-5 「戦時日誌」に書かれていないこと
戦時日誌作成の実際
記載されなかった失敗
3-6 続いていたクレタ島の戦い――占領と抵抗
シュトゥデントの厳命
レジスタンスの結成
将軍拉致作戦
3-7 何に忠誠を誓うのか――「軍旗宣誓」をめぐるドイツ史
3-8 山本五十六はミッドウェイで将棋を指したか
従兵長の回想
否定する戦務参謀
軍楽兵の決定的証言
3-9 笹川良一の「抵抗」?
「信州戦争資料センター」の発見
白亜館上の盟ならざるべからず
改竄されていた山本書簡
3-10 「いって聞かせ」なかった山本五十六
終章 「戦史は繰り返す」か――現状分析への歴史の応用
テーゼとアンチテーゼ
「記号」はいらない
「歴史は繰り返さないが韻を踏む」
概念の陥穽
註
主要参考文献