マゼラン船団 世界一周500年目の真実
大航海時代とアジア

大野拓司
本体 2,700円
ISBN 978-4-86182-977-2
発行 2023.10
【内容】
日本も巻き込まれた西欧の大航海時代について、著者はアジアの視点から新事実を掘り出している。大航海時代と日本についての洞察も、じつに興味深い。――保阪正康氏推薦!(ノンフィクション作家)
いまから500年前、グローバリゼーションの嚆矢となった、マゼランたち。
なぜ彼らは、東アジアにむかったのか、そして、遭遇してしまったフィリピンの人々は、どう彼らを迎えたのか。
膨大な記録・資料の調査、現地取材をもとに、丁寧に解きほぐされる“真実”。
《画像・資料多数》
【内容目次】
はじめに
マゼラン船団の五〇〇周年/基礎となる歴史資料/注目すべき事実/豊かなアジア/貧しいヨーロッパ
第1章 マゼランは、フィリピンで何を見たのか
1 笑顔と恐怖が交差する出会い
ものの道理のわかる人たち/陽気でおしゃべり、大酒飲み/船腹から大砲を一斉に発射
2 西回りでめざせ「香料諸島」
東回りでポルトガルが先陣を切る/マゼランの野心とスペイン王室/欲したスパイスはなかった
3 多国籍チームとバスク人
海外進出ブームに湧く/お土産物もどっさり積み込む/「海の民」は進取の気性
第2章 「待望の岬」から大海原への挑戦――マゼラン海峡を越えて
1 大河ラプラタに踏み入る
主役はカラック船/部族の長「カシーク」/願望や誤解にもとづく命名
2 船団が抱えた「反目の芽」が表面化
長身の民族との鉢合わせ/引き返すべきか、前進か/マゼランが見た地図の謎/執念と霊験が「出口」へと導く
3 穏やかな海ですさまじい飢餓
西北西から北西に舵を切る/どうしたのか、「ありあまるほど」の海の幸/誤解が招いた悲劇
第3章 バランガイ社会の人びとと暮らし――マゼランとセブの「王」フマボンとの血盟
1 セブのラジャと結んだ「血盟」の契り
入港する船は税を治めよ/最も確かな友情の印/「宿務」は交易ビジネスのハブ
2 洗礼八〇〇人が八〇〇〇万人超に
最初のミサが行われた日/トップダウンの集団改宗/マゼランクロスは万病に効く
3 点在する自給自足型の自然村
人びとは昔、海からやって来た/濃密な人間関係が集団の絆/膨らんだり、縮んだり、移ったり
4 衣・食・住、そしてトイレ
エコでサステイナブルな高床式/会食を重ねて関係を深める/床下空間の有効活用/人間世界は四つの要素で色分けできる
第4章 歴史に足跡を刻む――マゼランの死とエルカーノによる世界一周
1 「アウェー」対「ホーム」の戦い
援軍の申し出を断って出撃/「インディオ」と呼ばれた諸島民/ラプラプをもっと讃えよう
2 初の世界周航の栄誉はエルカーノに
殺し、殺され、奪われ/日付のズレに気づく/生還者は少なくとも三五人/カレイの炭火焼きが有名
3 膨らむ「奴隷のエンリケ」像
出身地はどこか/事件後、消息は途絶えた/「家具のおまけ」がバリクバヤン
4 民族の誇りを掘り起こせ
「穏やかで、つつましい民」/基層に基づく伝統文化/しっかりしていて強かった
5 「ジパング」はフィリピンだった?
海外の史資料を読み込む/航海記にも随所に産金情報/見直されるトライバル・タトゥー
第5章 「マゼラン」後の展開――ガレオン貿易とグローバル化
1 順風をつかめ、海流に乗れ
想像の域をはるかに超えた広さ/ついに開けたウルダネタ・ルート/北半球では時計回りの流れ
2 ガレオン船航路は「絹の道」「銀の道」
北上するイスラームの波を押し戻す/中継貿易は二五〇年続いた/グローバル化の嚆矢
3 ヒト・モノ・文化が行き交う
サツマイモやタバコが来た道/「マニラメン」とラフカディオ・ハーン/メキシコ少年たちがワクチンを運ぶ
4 ラス・イスラス・フェリペナス
「東方諸島」は「西方諸島」だった/フェリペ皇子の島々/無敵ではなかった「無敵艦隊」
5 「フィリピーノ」の誕生
地位と権力を「見える化」する町づくり/カトリックを横串に長屋を建てる/「本社派遣組」と「現地採用組」のミゾ
第6章 マニラと中国人社会、日比関係の源流
1 交易の結節都市は「東洋のコスモポリス」
八〇万人規模を想定した街づくり/城壁に囲まれた特権社会
2 中国人を警戒しなあら共存共栄を図る
九世紀前後の貿易陶磁器が出土/現存する「世界最古」のチャイナタウン
3 「国家」に翻弄される日比間の交流
貿易振興がジレンマを生む/キリスト教と領土支配の野望/ガレオン貿易への参入狙う?/「南洋」の日本人町
終章 大航海時代とマゼラン、そしてアジアのその後
1 実利で受容、ポジティブリストで対応
ザビエルはメガネも持ってきた/新教国オランダとの邂逅/「鎖国」が自給自足化を促す
2 パンデミックが大航海時代への道を開いた
どこにも「怪物」はいなかった/ルネサンスから対抗宗教改革へ/三つの大洋がつながる
3 アジアの豊かさに引き寄せられる
鄭和の「南海大遠征」/商船一隻はラクダ二〇〇〇頭に匹敵/東洋の物品には特別の魅力/毛細血管を大動脈が飲み込む
4 歴史の見直しを迫る動きのなかで
折れたマゼラン記念碑/マゼラン後の“地球一周”/「大発見時代」と「大航海時代」
あとがき
年表1 マゼラン・エルカーノ遠征隊の航跡
年表2 大航海時代の主な出来事
参考文献