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闇からの光芒――マフマルバフ、半生を語る

【内容】
その言動に世界が注目するイランの映画作家が、あまりにも過激な半生と、芸術家としての営為のすべて、そしてイスラムとアメリカの現在・未来を語り尽くす。[マフマルバフ・フィルムハウス提供による貴重図版多数収録]

映画『カンダハール』や『アフガン・アルファベット』、書籍『アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ』などで現在注目を集めているモフセン・マフマルバフ監督が、自らの半生を語った。政治活動に身を投じた生い立ちから自らの映画理念、さらには現今の世界情勢に対する見解を詳細に語っている。
「昔々、ある映画監督が……」の前半部分では、映画監督として活躍する以前の、マフマルバフの生い立ちが語られる。若くして王制打倒のための地下活動に身を投じた経緯、警官を襲撃して逮捕された事件、刑務所で受けた拷問の方法などが、微に入り細を穿って説明される。イスラム革命による釈放後、暴力による革命から文化的活動によるそれに自らの活動を転換した経緯が述べられる。後半部分ではマフマルバフの映画理念が語られる。自作の解説や成立背景の説明、批評家としての顔も垣間見える。また、この後半部分には、イラン、イスラム社会全体への現状批判も多く含まれている
。 「アフガニスタンについて」は、96年から現在までのマフマルバフの活動について。『カンダハール』とこのフィルムが巻き起こした物議、最新作『アフガン・アルファベット』などについてがマフマルバフ自身の言葉で語られた、貴重なインタビュー。
「マフマルバフの全体像」は、ハミッド・ダバシによる、マフマルバフについての論考。

【著者・訳者紹介】
モフセン・マフマルバフ(Mohsen Makhmalbaf)1957年、テヘランの貧しい下町に生まれる。10代半ばで、当時のパーレビィ王政打倒を目指す地下活動に身を投じ、17歳のとき、警官の銃を奪おうとして失敗。4年半にわたる獄中生活を体験する。79年のイスラム革命の成就により釈放され、その後は、世界を変えうるものは暴力ではなく文化であるという考えから、まず作家として、82年からは映画監督として活動を始める。89年にはアフガン難民の男を描いた『サイクリスト』が「すべてのイラン人が見た」と言われるほどの大ヒットを記録し、イラン最高の人気監督となる。日本では2000年の『パンと植木鉢』『ギャベ』同時公開が映画ファンの間で大きな話題を呼び、多くのファンを獲得。2001年の作品『カンダハール』は、「9・11」の影響もあり、全世界に大きな衝撃を与えた。最新作は『アフガン・アルファベット』。

ハミッド・ダバシ(Hamid Dabashi)1951年、イラン南部アハバーズ生まれ。テヘランで高等教育を受けた後、1976年に渡米。ペンシルヴェニア大学で博士号を2つ取得(文化社会学とイスラム学)。1989年よりコロンビア大学教授。現在、同大学中東アジア言語・文化学部長。著作は、全米図書賞、コロンビア大学ライオネル・トゥリリング賞などを受賞。近年は、イラン映画を英語圏に紹介する仕事に積極的に携わっている。訳書に『イラン、背反する民の歴史』(作品社)。

市山尚三(いちやま・しょうぞう)1963年生まれ。オフィス北野プロデューサー。アボルファズル・ジャリリ作品など、イラン映画のプロデュースを数多く手がける。共著書に、『新世紀アジア映画』(キネマ旬報社)、『Cine lesson4 ワールド・シネマ!』(フィルムアート社)、『思想読本9 アジア映画』(作品社)などがある。