イブン・タイミーヤ政治論集
イブン・タイミーヤ
中田考編訳・解説
本体3,800円
ISBN 978-4-86182-674-0
発行 2017.12
【内容】
〈ジハード〉とは何か?
西洋近代とは異なる「政治」の要諦。
本書は、イスラーム国法学と政治の一般理論、現代原理主義反体制武装闘争派の革命論に理論的基礎を与えたファトワ―(教義回答)など、現代中東政治を読み解くための最良の古典である。
訳者、渾身の解説付き。
著者タイミーヤは、イスラームの“日蓮”ともいうべき人物であり、中世の代表的思想家、伝統主義的なハンバリー学派の法学者および神学者である。“異教徒”十字軍の侵略、モンゴル軍の怒涛の進撃によって、彼が生きた13世紀のイスラーム世界は荒廃した。その時代にあって、神学にとどまらず当時の政治、社会情勢に敢然と立ち向かい、論争をしばしば巻き起こし、イスラーム思想を革新した。彼の思想は、現サウジアラビア王室から、いわゆる過激派、アルカイダやIS(“イスラーム国”)まで、現代中東政治に多大な影響を与えている。
訳者は、いま最も“危険な”この人物の研究を長年のライフワークとしてきた。本書は、その精華である。
【著訳者略歴】
イブン・タイミーヤ (1263-1328)
中世イスラームの代表的思想家であり、伝統主義的なハンバリー学派の法学者および神学者。シリアのハッラーンで生まれた。モンゴル軍の侵入を避けダマスカスに移る。神学にとどまらず当時の政治、社会情勢に対して大胆に発言し、論争をしばしば巻き起こす。そのため投獄され、ダマスカスの城塞に幽閉中に死去。 クルアーン、ハディースのテキスト、そして最初期のムスリム(イスラム教徒)の教説を尊重し、後世に与えた影響は大きく、ことに18世紀にアラビア半島で起こった復古的改革を目ざすワッハーブ運動の思想的源流となった。
中田考(なかた・こう)
1960年生まれ。同志社大学客員教授。一神教学際研究センター客員フェロー。83年イス ラーム入信。ムスリム名ハサン。灘中学校、灘高等学校卒。東京大学文学部卒業。東京 大学大学院人文科学研究科修士課程修了。カイロ大学大学院哲学科博士課程修了(哲学 博士)。クルアーン釈義免状取得、ハナフィー派法学修学免状取得。在サウジアラビア 日本国大使館専門調査員、同志社大学神学部教授、日本ムスリム協会理事などを歴任。
主な著書に『イスラーム法とは何か?』(作品社、2015年)、『イスラームの論理』 (2016年、 筑摩書房)、『イスラーム入門』(2017年、集英社)、『帝国の復興と啓蒙の未来』(2017年、 太田出版)、翻訳に、『フトゥーワ』(2017年、作品社)、監修書に『日亜対訳クルアーン』 (2014年、作品社)。