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山本周五郎探偵小説全集 第一巻 少年探偵・春田龍介

【内容】
父博士の発明の秘密、奪われた黄色金剛石の頸飾の行方、隠し財宝をめぐる殺人事件の謎、大陸に跋扈する暗殺秘密結社との激闘……。天才少年探偵・春田龍介、縦横無尽に大活躍!
日本ミステリ史の空隙を埋める画期的全集、山本周五郎の知られざる探偵小説62篇を大集成!『山本周五郎探偵小説全集』刊行開始!

【内容目次】
危し!! 潜水艦の秘密/黒襟飾(ネクタイ)組の魔手/幽霊屋敷の殺人/骸骨島の大冒険/謎の首飾事件/ウラルの東/殺生谷の鬼火/亡霊ホテル/天狗岩の殺人魔/劇団「笑う妖魔」/編者解説

【著者紹介】
山本周五郎(やまもと・しゅうごろう)1903〜1967。山梨県生まれ。小学校を卒業後、質店の山本周五郎商店の徒弟となる。文芸に理解のある店主のもとで創作を始め、1926年の「文藝春秋」に掲載された『須磨寺附近』が出世作となる。デビュー直後は、倶楽部雑誌や少年少女雑誌などに探偵小説や伝奇小説を書いていたが、戦後は政治の非情を題材にした『樅ノ木は残った』、庶民の生活を活写した『赤ひげ診療譚』『青べか物語』など人間の本質に迫る名作を発表している。1943年に『日本婦道記』が直木賞に選ばれるが受賞を辞退。その後も亡くなるまで、あらゆる文学賞の受賞を拒否し続けた。
末國善己(すえくに・よしみ)1968-。文芸評論家。編書に『国枝史郎探偵小説全集』、『国枝史郎歴史小説傑作選』、『国枝史郎伝奇短篇小説集成(全二巻)』、『国枝史郎伝奇浪漫小説集成』、『野村胡堂探偵小説全集』、『野村胡堂伝奇幻想小説集成』、『探偵奇譚 呉田博士【完全版】』(以上作品社)など。

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山本周五郎探偵小説全集 第五巻』へ
山本周五郎探偵小説全集 第六巻』へ

「ほぼ日刊イトイ新聞」の「担当編集者は知っている」コーナーに掲載されました。

【本全集について】
 山本周五郎の探偵小説については、雑誌「幻影城」の一九七五年九月号で特集が組まれ、四作品の復刻と木村久邇典の論考「山本周五郎のミステリー」が掲載されたので、古くからの探偵小説ファンならば、その存在は周知のことだろう。だが現在、容易に入手できる山本周五郎の探偵小説は、覆面作家のペンネームで発表された連作集『寝ぼけ署長』と、新潮文庫の短篇集に収められた「黒襟飾組の魔手」や「猫眼レンズ事件」など数篇しか存在しない。いまだに多くの作品が雑誌掲載のまま埋もれていることを考えると、山本周五郎の著した探偵小説の再評価は決して進んでいるとはいえない。
 山本周五郎の探偵小説の復刻が遅れたのは、散逸が激しく、公的な機関にもほとんど所蔵されていない博文館の少年少女雑誌に発表されたことも大きかったように思える。『山本周五郎探偵小説全集』の刊行にあたっては、山本周五郎が戦前に活躍した「少女世界」「少年少女譚海」「新少年」などの雑誌を可能な限り調査し、六十篇を超える作品を集成した。若干ながら、雑誌が発見できず収録できなかった作品もあるが、本全集があれば山本周五郎の残した探偵小説の全貌が概観できるはずだ。
 戦前の少年雑誌に発表された長篇探偵小説は、中国大陸(『ウラルの東』『血史ケルレン城』)や南洋(『南方十字星』)、果てはイタリア人の圧政に苦しむエチオピア(『獅子王旗の下に』)などを舞台に、主人公が悪の組織と戦う血湧き肉躍る冒険活劇で、その完成度は山中峯太郎の名作に勝るとも劣らない。一方、短篇は「亡霊ホテル」「殺生谷の鬼火」「新造船の怪」というタイトルからも分かるように、冒頭に置かれた奇怪で幻想的な謎が、合理的に解明される本格探偵小説になっており、今読んでもまったく古びていない。それだけに、ミステリーファンは山本周五郎の探偵作家としての確かな手腕を、古くからの山本周五郎のファンは、周五郎作品の新たな魅力――希代のストーリーテラーとして『五辮の椿』『樅ノ木は残った』などの傑作を残した作者の原点を発見できるのではないだろうか。
 また近年、日本文学研究では、大衆文学や少年少女小説、戦時中に執筆された作品などの研究が注目を集めている。ミステリー史や児童文学史の空白を埋める山本周五郎の探偵小説を復刻することは、最新の文学研究にも益することになるだろう。また長く木村久邇典が続けられてきた山本周五郎の書誌データを補完し、これまであまり語られることのなかったデビュー直後の動向を知ることもできるようになり、山本周五郎研究に新たな光を当てることもできると考えている。(末國善己)