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李氏朝鮮最後の王李垠 第一巻
大韓帝国1897-1907

【内容】
もう一人の“ラストエンペラー”――日韓の動乱の歴史の闇に隠された、謎の生涯を、初めて明らかにする。
李朝500年の最後の王にして、大韓帝国の皇太子。日韓併合で大日本帝国の「準皇族」となり、皇族の妻(梨本宮方子)と結婚。そして、戦争が終わる……

“李垠”の生涯は、日韓の動乱の歴史の狭間で翻弄され、日本では侵略の歴史の暗部として、韓国では「親日派」として、歴史の闇に隠されてきた。
本書は、日韓の比較研究を行なう在日コリアンの研究者である著者が、新資料や新事実をもとに、日韓の国境を超えた波瀾の生涯を、初めて明らかにしたものである。

■李垠(り・ぎん/イ・ウン)
1897〜1970年。李朝500年の最後の王として生れ、大韓帝国の皇太子となる。幼少期に、伊藤博文の画策により訪日し、学習院・陸軍士官学校で学ぶ。明治43年、日韓併合によって大日本帝国の「準皇族」となり、皇族・梨本宮家の方子と結婚。帝国陸軍に入隊し中将となり、「大東亜戦争」末期には軍事参議官を務めた。
戦後は、李承晩政権から「対日協力者」として韓国帰国を拒否されたが、朴正煕政権の時代に日韓国交正常化が進むと、李王朝の末裔として韓国に迎い入れられ、ソウル最大の宮殿・昌徳宮に住まい、生活費は韓国政府が支出するという、王族としての待遇を受けた。生涯を添い遂げた日本人妻・李方子は、夫の死後も韓国に留まり、李朝最後の妃として王朝衣装を着て世界を飛び回り資金を集め、障害児教育に取り組み、韓国政府から国民勲章第一等を追贈された。

■第1巻「あとがき」より
本書は、『李氏朝鮮 最後の王 李垠』の第1巻にあたります。李垠はまだよちよち歩きで、やっと一〇歳になったばかりです。本書では、まだ大韓帝国という国家がまがりなりにも存在している時代で終わっています。これには理由があります。本書のなかでもお話ししているように、李垠は「李氏朝鮮王朝・大韓帝国の最後の皇太子」でありながら、のちに大日本帝国の「李王」という不思議な「王位」についた人間です。そのため彼は古いしきたりに従っていくつもの儀式を経験しており、それらはまるで「王朝絵巻」を見るような古色蒼然たる儀礼でした。こんな経験をした人間は、おそらく彼が最後でしょう。だからそれを私が描き出してみたいと思ったのです。古い儀式――王妃の妊娠、出産にかかわる風俗、王子が水疱瘡や麻疹にかかったときの儀礼など――は、それまでの李氏朝鮮王朝の王子たちが主役となり、粛々と進められてきたものです。李垠はその最後尾に生まれたのです。
その上で、李垠を含む大韓帝国皇室が日露戦争に巻き込まれてしまいます。この場面を、日本やロシアではなく大韓帝国から眺めてみたいと思い、このたびは筆をとったのです。冒頭に「よちよち歩き」という表現をしましたが、たしかに李垠はまだ一〇歳に過ぎません。いまの感覚では小学生程度です。彼をめぐる問題をあぶり出すことで、二〇世紀初頭の東アジア全体にかかわる国際関係を、想像力を駆使して書いたのが、本書です。